日本語の敬語は難しい!ホントにそう思います。それほどに奥が深い言語ということです。日本人は母国語にもっと誇りを持って良いと思います。
正しく使えばそれだけで十分に美しく温かい。それが日本語ではないでしょうか。
- 1.×「なかなかおいしかったです」
- 2.×「教え方が上手ですね」
- 3.×「おわかりになりましたか?」
- 4.×「今日はお休みさせていただきます」
- 5.×「お声が小さくて聞き取れないのですが」(電話応答)
- 6.×「もう一度説明してください」
- 7.×「つかぬことをおうかがいしますが」
- 8.×「そちらでは、雨が降っていらっしゃいますか?」
- 9.×「どうも申し訳ありませんでした」
- 10.×「当社の佐藤部長です」
- 11.×「ご要望を教えてください」
1.×「なかなかおいしかったです」
ごちそうになるときこそ、きちんとした言葉で感謝の気持ちを相手に伝えたいものです。
「なかなかおいしかったです」という言い方は論外です。
致命的なのは、「なかなか」という言葉です。
この言葉には、料理や店を選んだ上司に対する上から目線の評価が含まれてしまいます。
思い出すのは、平成29年名古屋場所、白鵬が通算1047勝をあげ魁皇の記録を抜いた日のことです。
解説の貴乃花親方が、「なかなかの数字」と語っていました。
思わず、「え?それは褒めてるの?」と違和感を覚えました。絶賛する時の言葉とはちょっと違うからです。
「なかなか達成できない素晴らしい数字」と言いたかったのでしょうか。
言葉のニュアンスってなかなか難しいですね。
「おぬし、なかなかできるな」も絶賛ではありません。
〇「たいへんおいしくいただきました。ありがとうございました」
◇ごちそうされたときのお礼
- 〇「大変ごちそうになりました」
- 〇「普段は口にできない高価なお料理をありがとうございました」
◇会話できたことへのお礼
- 〇「楽しいひとときありがとうございました」
- 〇「素晴らしいお話、勉強になりました」
- 〇「貴重な意見をうかがえてうれしく存じます」
私が新入社員の頃、ごちそうになった翌日は、「昨夜はごちそうになりました」とお礼を言いに行くように教わったものです。
損得は別にして、お礼は人として当たり前のことです。
しかし、最近ではこういう行為まで「社畜マインド」と呼ぶ人もいるから不思議です。
×「サンキュー」
英語では正しくても×ですね。大学時代の先輩に「サンキュー〇〇」とニックネームが付いている先輩がいました。〇〇には姓が入ります。
柔道の技を教えてくれた師範の説明に感動して思わず「サンキュー!」と言ってしまったそうです。
周りは一瞬、驚きで凍ったそうです。
教えてくれる人に、次の言い方もマズいですよね。
2.×「教え方が上手ですね」
ほめた側が上の立場にいる印象を与えてしまいます。「上手」は評価にあたるからです。
〇「勉強になりました」
〇「ご指導を受けることができ幸運です」
慣れないうちは照れてしまうかもしれません。しかし、褒められてうれしいのは人の性です。
お世辞とわかっても、「自分は、お世辞を言われるくらい重んじられているのか…」と内心は思うものです。
次は、ほめ言葉×の例です
- ×「さすがですね」
- ×「見直しました」
「見直す=それまでの認識を変える」となるので危険なホメ方ですね。
- ×「なかなかやりますね」
- ×「隅に置けませんね」
- ×「大したものですね」
- ×「結構すごいですね」
思いを自然な形で口にすることは、成熟した社会人のあり方だと思います。
3.×「おわかりになりましたか?」
文法的には問題ありませんが、相手の理解力を試しているようなニュアンスがあります。
- △「お教えします」
- 〇「おわかりいただけましたでしょうか?」
- 〇「言葉が足りない箇所はございませんでしたか?」
「ご理解できましたか?」も×です。
4.×「今日はお休みさせていただきます」
主語を補えば、「(私は)今日はお休みします」となります。
自分のことを「お休み」とするのは変な日本語です。
自分の行為に対して美化語である「お」「ご」は付けないことです。
〇「今日は休ませていただきます」
「今日は加藤さんはお休みです」は自分のことではないので〇です。
欠勤するときには…
- 〇「 発熱してしまい、欠勤させていただきたいのですがよろしいでしょうか。」
- ×「発熱してしまい、 体調が無理なので会社休みます。」
お願いするときは疑問形を使うと丁寧さがアップします。
- ×「これ、お願いします。」
- 〇「これ、お願いしてもいいですか?」
×「お書きください」
- △「書いていただけますか?」
- 〇「書いていただいてもよろしいですか?」
5.×「お声が小さくて聞き取れないのですが」(電話応答)
- 〇「もう一度お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
- 〇「恐れ入りますが、もう一度お名前をお聞かせいただけますか?」
- 〇「少々お電話が遠いようなのですが」
- 〇「周りが騒がしいものですから、何度も申し訳ございません」
6.×「もう一度説明してください」
命令形なので×です。
再度の説明をお願いするわけですから、丁重な敬語が必要です。
- 〇「~について確認させていただけますでしょうか?」
- 〇「~について、もう一度ご説明いただけないでしょうか?」
理解できた場合
- 〇「十分理解できました」
- 〇「よく理解できました」
理解できなかった場合
- 〇「~と理解しましたが、間違っていませんか」
- 〇「~の部分がまだ十分に理解できておりません」
- 〇「~についてもう一度ご説明いただけませんでしょうか」
- 〇「~の部分をお教えいただけませんでしょうか」
7.×「つかぬことをおうかがいしますが」
「つかぬこと=それまでの話とは関係のないこと。だしぬけのこと。」なので、話は別件に飛んでしまいます。
ここでは、
- 〇「少々おうかがいしますが」
- ×「少々つかぬことをおうかがいしますが」
「少々」「つかぬこと」を合わせると過剰な表現になり、無駄に回りくどい言い方になります。
8.×「そちらでは、雨が降っていらっしゃいますか?」
この場合の「いらっしゃる」は、動詞の後ろに付いて尊敬の意味を添える補助動詞です。
本来は「~さんが使っていらっしゃる」と、目上の相手の行為の後ろに付けます。
「雨」が主語なので、天候に敬語を使っていることになり不適切です。
- 〇「そちらでは、雨が降っていますか?」
- ×「雪が積もっていらっしゃいますか?」で考えると、わかりやすいと思います。
9.×「どうも申し訳ありませんでした」
「どうも」は使いやすい言葉です。
「どうもありがとう」の「ありがとう」を省略して「どうも」。
「どうも、久しぶりです」の時に「どうも」。
気楽な挨拶や謝罪を表す言葉として浸透していますが、語源もハッキリしないという説もあります。
改まった場での言葉としてはふさわしくないようです。
〇「まことに申し訳ありませんでした」
10.×「当社の佐藤部長です」
名前のあとに役職名を付けるのは、その人への敬意を表わすときです。
ですから、社内の人を社外の人に紹介する場合には不適切です。
たとえ上司でも名前は呼び捨てにし「当社の佐藤です」のように紹介します。
役職名を伝える必要がある場合は「部長の佐藤です」と紹介するのが正解です。
〇「当社の部長の佐藤でございます」
11.×「ご要望を教えてください」
「教えてください」は「教えなさい」を丁寧にしただけで、内容は行為の指図と同じです。
〇「ご要望をお教えいただけますか」
※「ご教示いただけますか」は知識や方法を目上の人から教わる場合の言い方ですので、先方の要望を聞きたい場合とは区別して使います。
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