言葉を知ることは、会話に自信をもたらします。自信は心を豊かにし、ひいては生きること楽しくしてくれるものです。
敬語に自信がなく、面接で過度に緊張してしまう高校生はとても多いです。
言葉は心の窓~自信を持って開きたい
1.×「〇〇さんはおりませんか」
「おる」は「いる」の議譲語です。
◎「〇〇さんは、いらっしゃいますか」
が正しい尊敬語です。
「〇〇さんはおられますか」は、よく使われます。
どこの職場に行っても、一人くらいは必ず使う人がいるようです。
しかし、「られる」を付けても「おる」は謙譲語なので、敬意としては一段落ちます。使わない方が無難でしょう。
2.×「〇〇部長がおっしゃられました」
「言う」の尊敬語「おっしゃる」に、尊敬の助動詞「られる」を付けた「おっしゃ
られる」は、二重敬語と呼ばれる誤った使い方の代表です。
◎「おっしゃいます」
◎「おっしやる」
3.×「私も知っております」
- 「知る」の尊敬語は「ご存じ」「お知りになる」
- 「知る」の謙譲語は「存じる」「存じ上げる」
どちらも「存じ」が入っていて似てますね!?
語感も近いために、使い慣れないうちは言い間違えてしまうこともありがちです。
- ×「それについては、私もご存じです」
- ×「部長が私のことを存じ上げてくださって」
「存じる」は「思う」「知っている」の謙譲語でもあるため間違えやすくなります。
たとえば、「もうご承知のことと存じます」 ⇒ これは〇です!
◎「私も存じ上げております」
4.×「それはできません」
意図は伝わりやすいかもしれませんが、ちょっと投げやりな言い方ですね。
謙譲語「いたす」の否定形である「それはいたしかねます」が良いです。
◎「それはいたしかねます」
5.×「課長なりのお考えをお聞かせください」
「なり」には謙譲の意味があるため、目上の人に使うのはNGです。
言われた上司は「なんで部下上から目線で意見を求められなきゃいけないのだ」
と怒りを覚えてしまうことでしょう。
たった2文字の「なり」ですが、決して侮れません。
逆に意見を求められた際に「私なりの意見なのですが」と使うのは◎です。
そうすれば謙虚な姿勢もアピールでき、多少的外れな意見を述べても笑って受け止めてもらえそうです。
◎「課長のお考えをお聞かせください」
6.×「本日、鈴木はお休みをいただいています」
休みの許可は会社から与えられているので、社員同士で「お休みをいただきます」は◎。
しかし、社外の人に言うのは間違いです。
◎「本日、鈴木は休みでございます」
◎「本日、田中は休んでおります」
社員の休みに「お」を付けて社外に伝えるのもNGです。
7.×「お教えします」
自分が担当した案件などについて、上司から説明を求められることも多いでしょう。
ですが、「鈴木君、この件について教えてくれないか」と言われて、上司が「教えて」という言葉を使ったからといって、「はい、お教えします」と答えてはいけません。
「いたす」=謙譲語
なのです〇ですが、
「教える」=上の者から下の者に向けて行うというニュアンス
が含まれます。
そのため、相手を見下しているような印象を与えてしまう危険性があります。
◎「ご説明します」
◎「ご説明いたします」
「お~する」の謙譲語の言い方を自然に使えるようになると楽になるでしょう。
8.×「部長、それを持ってきてくれませんか?」
「くれる」=相手が自分のために何かすることを要求する言葉
目上の人に使うべき言葉ではありません。
◎「課長、それを持ってきていただけないでしょうか?」
丁寧語を使えば頼みごてもいいと思い込む勘違いは多いです。
9.×「お断りします」
拒否するとき⇒敬語が特に重要!
◎「お受けいたしかねます」
◎「承りかねます」
- 「引き受ける」の謙譲語=「お受けする」
- 「了承する」の謙譲語 ⇒「承る」
をそれぞれ否定形にすれば、正しい言い方になります。
何でもハッキリ言えば良いわけではないのが、日本語の奥ゆかしさでもあり、同時に難しさでもあります。
拒否する際の間違いとして、次の例も多いです。
×「お会いできません」 ⇒ ◎「お目にかかれません」
×「お引き受けできません」 ⇒ ◎「承れません」
10.×「わかりません」
「知りません」も×ですね(^_^)。
否定語を断定的に話すのは、相手の印象を悪くすることがあります。
◎「わかりかねます」
◎「不勉強なものでして」
「不勉強…」は、教えていただき感謝しているという表情を出すと好感度がアップするでしょう。
11.×「できません」
◎「いたしかねます」
語気も重要な要素なのは言うまでもありません。
「いたしかねます!!!」では、せっかくの敬語も台無しですもんね(^_^)。
12.×「もう一度、言ってください」
「~してください」は、基本的に命令形の表現です。
◎「おっしゃっていただけまか」
と疑問形にして相手に依頼する表現の敬語に変えれは、印象も柔らかくなります。
13.×「課長、ご苦労さまです」
「ご苦労さま」⇒部下や後輩にの労をねぎらう際に使う言葉
◎「お疲れさまです」
- 「お疲れさま」と省略⇒×に近い△
- 「ご苦労さま」×
- 「どうも」×
14.×「私もご一緒します」
「同じ方向ですし、ご一緒いたします」などと使いがちですが、この言葉は主に同格の人に対して使うものです。
◎「私もお供いたします」
「供」という言葉自体に主人に付いていくという意味があり、相手の気分を良くする効果が期待できます。
15.×「部長、時間ですので参りませんか?」
「行く」の謙譲語が「参る」なのでOKとはなりません。
上司の行動について聞いているので、尊敬語を使う場面です。
◎「時間ですのでお出掛けになりませんか?」
ただし、上司にとっても目上の人物の場合には「参りませんか」でも問題ありません。
同様に、
「 お会いしたのですか?」×
◎ 「お会いになりましたか?」
「 いただきましたか?」×
◎「召し上がりましたか?」
「書類はもういただきましたか?」×
◎「書類はお持ちでしょうか?」
「鈴木さんでございますか?」×
◎「鈴木さんでいらっしゃいますか?」
が正しい言い方になります。
あとがき
『古事記』 が誕生したのは奈良712年。当時の日本には「話し言葉」のみで「文字」はありませんでした。
記載にあたっては、中国の漢字を借用したため、漢字だらけの書物に見えますが、「やまと言葉」を記録した最初の書物と言われています。
文字のない世界では、語られる言葉に重みが置かれ、そこに言霊信仰が生まれる素地があったようです。
しかし、
「国家守護のスメ神の祝福の言葉が言霊であり、一般の人間の言葉に言霊が存在するものではない。」
と折口信夫氏の「呪言と叙事詩と」にあるとおり、『言霊』は、一般庶民の口から出される言葉とは無縁のものであったとする説が強いのです。
私は占いをしますが、『言霊』の効果には懐疑的なのは、効果を仮説とするにしても根拠があまりに薄いからであります。
また、あるかないかわからない言霊にこだわらなくても、正しく使う日本語は十分に美しいのです。
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