
年齢を重ねると、「ありがとう」よりも「すみません」が先に口をついて出る人がいます。
席を譲られた時。
重い荷物を持ってもらった時。
誰かに気を遣わせてしまった時。
本当は嬉しいはずなのに、咄嗟に出るのは、感謝よりも謝罪に近い言葉だったりします。
若い頃は、もっと自然に受け取れていたはずなのに、いつからか、
「迷惑をかけているのではないか」
「返せない存在になってしまったのではないか」
そんな感覚が、静かに心へ入り込んでくることがあります。
それは、感謝を知らないからではありません。
むしろ、人との関わりを大切にしてきた人ほど、「支えられる側になること」に戸惑いや申し訳なさを感じやすいようです。
- 「ありがとう」より「すみません」が先に出る
- 「役に立てない」が、人を苦しくさせる
- 「すみません」が多い人は、優しさを知っている
- 助ける側にも、「役に立ちたい気持ち」がある
- 老いは、人との距離を変えていく
- まとめ
「ありがとう」より「すみません」が先に出る
高齢の方と接していると、少し手を貸しただけでも、何度も「すみません」と言われることがあります。
「悪いねえ」
「申し訳ないね」
「迷惑かけるね」
そこには、もちろん感謝も含まれています。
でも同時に、
「自分は支えてもらう側になってしまった」
という、静かな戸惑いが混じっていることもあります。
人は誰でも年齢を重ねるほど、昨日まで普通にできていたことが、少しずつ難しくなっていきます。
階段。
買い物。
重い荷物。
長時間歩くこと。
若い頃には気にも留めなかったことが、誰かの助けなしでは難しくなっていく。
すると、人によっては、差し伸べられた優しさを「返せないもの」のように感じてしまうことがあります。
人は、「支えてもらうこと」そのものより、
「返せなくなっていくこと」に苦しさを感じる時があります。
「役に立てない」が、人を苦しくさせる
多くの人は、長い人生の中で、誰かの役に立ちながら生きてきました。
- 家族を支える
- 働く
- 子どもを育てる
- 誰かを助ける
- 責任を果たす
それゆえに、人生の後半で「助けられる側」へ変わっていく時、人は思っている以上に戸惑います。
特に、真面目な人ほど、
「人に迷惑をかけない」
ことを大切に生きてきました。
そのため、支えられること自体に慣れていないのです。
本当は、支え合うことは自然なことです。
それでも、
「負担になっているのではないか」
「役に立てなくなった」
「返せない」
そんな感覚が、静かに積み重なっていくことがあります。
「すみません」が多い人は、優しさを知っている
ここで大切なのは、「すみません」が多い人は、感謝を知らない人ではない、ということです。
むしろ逆です。
人の優しさを知っているからこそ、申し訳なさを感じやすいのです。
自分のために時間を使ってくれたこと。
動いてくれたこと。
気を遣わせてしまったこと。
そういうものが見えてしまう人ほど、「ありがとう」だけでは足りない気持ちになることがあります。
だから、「すみません」という言葉が増えていくのです。
それは、人との関わりを大切にしてきた証でもあります。
助ける側にも、「役に立ちたい気持ち」がある
人は、「支える側」になった時にも、実は救われていることがあります。
誰かの役に立てた時。
少しでも力になれた時。
「ありがとう」と言ってもらえた時。
そこには、小さな喜びがあります。
だから、支えられる側が必要以上に申し訳なさを抱えてしまうと、助ける側もどこか切なくなることがあります。
もちろん、簡単に気持ちを切り替えられるものではありません。
長い人生を、自立しながら生きてきた人ほど、「頼ること」に時間がかかるのは自然なことです。
ただ、人は誰でも、人生のどこかで「支える側」と「支えられる側」を行き来しながら生きています。
その立場は、ずっと固定されたままではありません。
老いは、人との距離を変えていく
若い頃は、自分ひとりで生きていけるような気がしていた人もいるかもしれません。
でも、人生は少しずつ変わっていきます。
身体も変わる。
気力も変わる。
役割も変わる。
そして、人に頼る場面が少しずつ増えていく。
それは敗北ではありません。
ただ、人はその変化を、すぐには受け入れられないことがあります。
特に、責任感が強かった人ほど、
「助けてもらう自分」
に慣れるまで時間がかかるのだと思います。
人生は、支える側だけで続いていくわけではありません。
人は時々、誰かに支えられながら、生きていく時期があります。
まとめ
「すみません」が増えていく背景には、老いだけではなく、申し訳なさや役割の変化、人との関係性の変化があります。
人は年齢を重ねるほど、「返せないこと」に苦しさを感じることがあります。
でも、それは冷たい人だからではありません。
むしろ、人との関わりを大切にしてきた人ほど、支えられることに戸惑いや申し訳なさを感じやすいのです。
人生の中では、支える側になる時期もあれば、支えられる側になる時期もあります。
その立場は、静かに入れ替わっていきます。
だから、「すみません」が増えていくのは、弱さだけではなく、人との関わりを大切にしてきた人生の一部なのかもしれません。
私自身が還暦が近い年齢になって、これまであまり考えなかったことを記事にしてみました。
▶ 人との関わりに疲れてしまう時は
人は、優しいからこそ疲れてしまうことがあります。
返せない苦しさ、申し訳なさ、気を遣い続ける疲労――。
人間関係の中で、少しずつ余裕を失ってしまうこともあります。
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