私は新採用の教員としてオホーツク沿岸の高校に勤務して1か月も経たない頃、妙な電話が学校に掛かってきました。
職員室で取り次がれたのに、
「周りに先生方がいる場所では話せない内容なので、離れたところからコールバックしてください」
と言われて、職員玄関にある公衆電話からその番号に掛け直しました。
2020年10月に書いた記事のリライトついでに思い出したので、その体験をここに書き記しておきます。
ハッキリ言って愚かな内容の電話でしたが、契約してしまった教員が全国に複数人いたのかもしれませんね。
私は契約しなかったし、あまりにバカらしかったので忘れていました。
過日、友人が詐欺にあった話を記事に書いたときにも思い出さなかったくらいです。
【詐欺電話】新採用教員時代の私に掛かってきた来た奇妙な電話
長くなると読んで疲れると思いますので、なるべく簡単に書きます。
(長くなったらすみません)
電話の女性が私に語った内容を箇条書きにします。
1.新採用の教員には多くの危険が待ち構えている
- 保護者、生徒とのトラブル
- 同僚とのトラブル
- 体罰や失言からの訴訟
- 生徒を同乗させた交通事故
- その他いくつか(忘れました)
などで失職した教員がたくさんいる。
2.そういう事態を防止するために当社との契約をお勧めする
- 契約期間は忘れたが、契約金は50万円
- 上記のトラブルに責任を持って対応する
- 校長からも「勧めてほしい」と内密で言われている(絶対ウソ。最後の電話でダメ押しに言っていた)
- 毎年、相当数の新任教員が申し込んでいる
- 今年度の枠ももうすぐ埋まる。明後日(たしかこのくらい)までに契約の意思を固めて欲しい
大まかに書くと以上の内容でした。
合計3回くらい電話で話しました。
それにしても、裏で校長から頼まれているなんて大ウソをよくついたものです。
電話だから言えることでしょうね。
対面だったらそんな大ウソ、まともな神経なら言えたもんじゃないでしょう。
詐欺全盛時代の前ですから、今考えると内容的には未熟だったと言わざるを得ません。
3.契約後の支援内容
- 専属の弁護士が最後まで親身に対応する
- 教育関係を専攻する大学教授が支援する
- 教育問題は特殊なため、経験豊富な陣営でないと厳しい
といった感じのことを力説していました。
「弁護士」「大学教授」、、、はい、やっぱりご登場!ですね。
権威(社会的勢力)を振りかざして、説得力アップを図る常套手段です。
2度目の電話では、「早く決めないと枠が埋まる」と厳しめの口調になっていました。
これも今にして思わなくても常套手段ですね。
それにしても、どこから名簿を手に入れたのか…。
思えば当時は簡単にそれが手に入る時代でした。
昭和50年代の『相撲』という雑誌をめくると、数か月に一度、各力士の実家の住所が記載されています。
今なら大問題になるでしょうが、平和な時代でしたね。
さて、話を戻します。
私は、女性に本社の場所を尋ねました。
仙台市でした。
(やった!仙台だ。質問攻めにしてやる!)
住所を聞きました。
女性はスラスラ答えました。
もう忘れましたが、某ビルの〇階でした。
「私は仙台の大学で学んでいました。今でも仙台にはよく行きます。契約した後に会社に挨拶に行きたいです」
もちろん、相手の反応を試すためのハッタリでした。
しかし、女性はあっさりと「どうぞいらっしゃってください」
私「大学教授は東北大学の先生ですか?」
女性「そうです」
私「名前を教えてください。私の出身大学なので知っているかもしれません」
女性「名前については契約後にお伝えすることになっております」
う~ん、なかなか尻尾をつかませない…。
今の私なら、「専属の大学教授の名前も聞かないで契約するはずないでしょ!」と迫ったでしょうに。やはり若かったのですね。
3度目の電話は向こうから掛かってきました。
「もう定員が埋まります。2時間だけ待ちます。意志が決まったら電話をください」
藁にもすがる不安な気持ちを駆り立ててやる!
という悪質な気迫が伝わってきました。
結局、それが最後の電話になりました。
スポンサーリンク
【詐欺の例】鍼灸師から聞いた話
ここから先は私の体験ではありません。
いつもお世話になっている鍼灸師から聞いた話です。
定期的に何時間も治療を受けているといろいろな話を聞くものです。
人から聞いた話ですので、そのことを前提にお読みください。
【警察署からの電話】
詐欺師「〇〇警察署の△△です。
これから詐欺の常習犯を逮捕しますので、ご協力をお願いします。
おそらく、2時間以内にお宅に犯人が行くと思われます。
警察を装って『通帳を確かめたいから預けて欲しい』と言うはずです。
言われたら、断らずに渡してください。
近くに張り込んでいる警官が尾行して必ず逮捕します。
逮捕後は、速やかに責任を持って本物の警官が通帳をお返しに伺いますのでご安心ください。
ぜひ、ご協力をお願いします。」
被害者「どうしてわざわざ預けないといけないのですか?」
詐欺師「物的証拠があると確実に逮捕できるからです。よろしくお願いします。」
この手口、けっこう引っかかる人も少なくないらしいです。
詐欺の手口はますます巧妙化しているようです。
人の善意につけ込む許しがたい行為ですね。
でも、通帳だけでお金を下ろせるのでしょうかね?
その辺りの事情は、聞きかじりなので私にはわかりません。
もしかしたら、カードも渡して暗証番号まで聞くのでしょうか?
「警察」と聞くとつい信じてしまう心理につけ込む悪質さを感じますね。
鍼灸師ご本人の経験でもないので、この話についてはこの程度にしておきます。
【詐欺を自慢する客】低周波治療器でボロ儲け
以前勤務していた常連のお客さんで、
「俺は昔詐欺で大儲けした」
という人がいたそうです。
今はもうやっていないそうです。
今もやっていたなら、当然そんな自慢はしないでしょう。
外国から低周波治療器を安価で買い集めて、それを持って農家に訪問販売したらしいです。
「実際に使ってみてください」
と自宅で体験させながら売り歩き、
「医学博士〇〇先生も推奨」を書かれた簡単なパンフレットを作って、一台20万円くらいで売っていたということです。
北海道での話です。
日本の治療器は、サイズのコンパクトさが売りです。
しかし、外国で生産した安いものはサイズが大きかった。
それは功を奏したらしいです。
- サイズが大きい=パワーがある
- 機器が重い=性能がギッシリ詰まっている
実際には、
- サイズが大きい=技術が未熟
- 機器が重い=持ち運びに不便
が真実なのですが、それをうまく逆手に取ったのですね。
考えることが奇抜と言いますか何と言いますか、一般の人とは逆の発想なのでつい騙されてしまうのでしょうね。
もう一度書きますが、相当数売り歩いたと自慢していたそうです。
リビングに入れた段階で相手は心を許しています。
そんな折、治療器を使わせてもらって、
「どうですか?効き目あるでしょう?」
と語りかけられたら、
「いえ、効きませんね」
とはなりにくいですね。
「ホントだ。気持ちいいね」
と言いたくなるのが、自然な心の流れではないでしょうか。
という私もこれまで温泉旅館で出張販売している健康器具を3台購入した経験があります。
「いいでしょう?効き目ありますでしょう?」と目の前で言われると、 本当に効き目があるような気持ちになります。
購入後、自宅で使ってみると、たいしたことはなかったです。
ちゃんとした業者のものでしたが、それでも苦い経験です。
「ただで使わせてもらって申し訳ない」という気持ちにも襲われます。
「人を信じることは良いことだ」と教わる機会は多いですが、ものを斜めに見てみることの教育も時には必要かもしれません。
話は変わりますが、占いの鑑定料も考えてみれば不思議です。
高ければ高いほど、力のある占い師と錯覚させるからです。
安ければ安いほど、自信のないがない占い師と判断されがちです。
本当はそんなこと全然ないのですが。
「占い料金は高くしたほうが良い」と断言する鑑定士も見受けられます。
それを考えたら、私の料金はお安いと思います。
リピートしてくださる方がたくさんいらっしゃるので救われております。
鑑定も回数を重ねるほど内容が深まってきますし、お互いに言いたいことを言いやすい雰囲気になるようです。
話が飛んでばかりで申し訳ありません。
医学博士の名前を使って問題にならなかったのでしょうか?
当時は詳しく調べる人もいなかったのでしょう。
万一調べられたら、もう転勤したとか、印刷を間違えたとか言い逃れの方法はきっと考えてあったことでしょう。
いやはや、何と言ったら良いのやら。
ある種の人間の持つ悪知恵は、時として想像のレベルを超えますね。
象牙を打って大儲けするために象を殺すなんて所業は、普通の人には思いつかないし、やりたいとも思わないものです。
道徳観や倫理観という人間にとって大事な一線を平気で越える人が、この世に一定数存在することは、念頭に置いておく必要があるでしょう。
【権威(社会的勢力)の原理】
社会的な権威から受ける影響を心理学では「権威(社会的勢力)の原理」と呼びます。
この「社会的勢力」=「権威を持っていると思われる人」とは、
- 実際に高い社会的地位についている人物
- 地位を象徴するようなステータスシンボルを持っている人物
のことを指します。
前述の詐欺が成功するのは「警察官」という権威があるからです。
警察官、大学教授、弁護士、医者、大会社の社長などは1に該当します。
「消防署のほうから来ました」と昔からあったやり口も「消防署」という権威を利用したものです。
2としては、
- 高級車に乗っている
- 高価なブランド品を身につけている
など、少しでも権威を感じさせるものがあれば、社会的勢力が強く働き、結果的には人は簡単にその人物のことを信じていやすくなります。
この心理を利用して権威を持たせることを権威づけといいます。
「権威づけ」は社会の中で多く行われており、その権威に従ってしまう人も多くいるということを知っておいた方が安全です。
心理学者のフレンチとレイブンは、「社会的勢力」についての研究で、次の5つの影響力を挙げています。
①賞勢力(しょうせいりょく)
この人物に従うと「いいことがある」と思わせる影響力
②罰勢力(ばつせいりょく)
この人物に従わないと「罰や損失をこうむる」と思わせる影響力
③正当勢力(せいとうせいりょく)
社会的な立場上、従うべきであると思わせる影響力
④専門勢力(せんもんせいりょく)
専門家という立場に従わせようと思わせる影響力
⑤参照勢力(さんしょうせいりょく)
魅力ある人物に憧れ、真似をしたいと思わせる影響力
その後、他の研究者たちから次の2つの社会的勢力も提唱されています。
⑥情報勢力(じょうほうせいりょく)
メッセージに説得力があるから、従いたいと思わせる影響力
⑦魅力勢力(みりょくせいりょく)
魅力ある人物や好意を持った人から頼まれたら従ってもいいと思わせる影響力
誰もが無意識のうちに、意図的に影響させられ、操られていることが多いことを理解しておくべきでしょうね。
スポンサーリンク
「権威(社会的勢力)の原理」の活用例
「〇〇大学医学部の●●教授が推奨している」
- 大学教授の名前を使うと一般人は信用しやすくなります
厳しい上司から「◇◇をやりなさい」
- 「出世に影響する」「嫌われたくない」と感じる
「私は◆◆の専門家です」
- 自己の知識・技術への権威付け
「研究」「~家」「~官」「~師」「~士」に弱い日本人
「研究」という言葉には、つい一目置く傾向がありますね。
「小説家」「作曲家」「作詞家」などと聞くと、何か特別な人という感情を持ってしまうかもしれません。
「面接官」に対しては誰しも緊張して接するでしょう。
「検察官」「刑務官」など権威を持たせる職種が多いことも確かですね。
ところが、
「私は〇〇の研究家です!」
これはちょっと微妙ですね。
「鉄道模型研究家」「昆虫研究家」「登山研究家」「スマホゲーム研究家」など「研究家」はどんな言葉に付けても違和感がありません。
「俺は、六大学野球研究家だ」
と言っても、
「趣味を極めている人なのだな」で済みます。
ところが、「六大学野球研究者」と言われたら、ニュアンスが変わります。
また、「昆虫研究者」となると、昆虫関係の論文を書いている学者を連想します。
「スマホ研究者」といわれると、
「工学部がそんな研究をする時代になったのか!?」
と思わせるかもしれません。
ところが「スマホ研究家」と言えば、
「マニアックな人なんだな」
で済んでしまうでしょう。
せいぜい、「ちょっとオタクっぽい人?」と心理的に引かれる程度でしょう。
だから、「私は〇〇の研究家です!」というのは、趣味を究めている人やそれを自営にして活躍している人、というニュアンスになりそうです。
境界線が曖昧であることは重ねて書いておきますが、「研究」という言葉にも「権威」を狙って使うケースがあるので注意は必要かもしれません。
それはさておき、
もともと権威がある人はやたらと「私は専門家です」などと言いません。
病院のホームページを見ても、
「私は医療の専門家です」
とわざわざ連呼するものを、ほとんどお見かけしません。オシが強すぎると品が下がりますしね。
【あとがき】詐欺師は思わぬところに!
改めて言うまでもなく、詐欺は人として最低の行為です。
詐欺は論外としても、購買欲を刺激する目的にも権威が利用されていることは知っておいて損はないと思います。
過剰に疑うのも問題ですが、とにもかくにも宣伝の多い世の中です。
とはいっても、極端な権威の軽量化は社会を良くない方向に走らせると私は危惧します。
- 警察官をまったく恐れない社会は危険です
- 教師を完全に軽んじる学校は危ないです
- 政治家をまったく信用しない国も危ういです
権威を自ら落とした方はもちろん悪いのですが…。
よろしかったら、下記の記事もお読みくださるとうれしいです。
ポチッとしていただけるとうれしいです。