実際にあった詐欺の話を書きます。
一つは、30年以上前にあった私自身の体験。次に、知人から聞いた詐欺師の実話。
最後に詐欺師がよく使う「権威の原理」についてまとめてみました。いつの時代も悪だくみは尽きません。悲しいかな、自衛が必要です。
【詐欺電話】私に掛かってきた来た奇妙な電話
「新採用の先生を守ります」
30年以上前の話で恐縮です。
オホーツク沿岸の高校に勤務して1か月も経たない頃、妙な電話が私宛てに掛かってきました。
「周りに先生方がいる場所では話せない内容なので、離れたところからコールバックしてください」
と言われて、職員玄関にある公衆電話からその番号に掛け直しました。
長くなると読んで疲れると思いますので、なるべく簡単に書きます。
(長くなったらすみません)
女性が私に語った内容を箇条書きにします。
1.新採用の教員には多くの危険が待ち構えている
- 保護者、生徒とのトラブル
- 同僚とのトラブル
- 体罰や失言からの訴訟
- 自家用車に生徒を同乗した交通事故
- その他いくつか(忘れました)
などで失職した教員がたくさんいる。
2.そういう事態を防止するために当社との契約をお勧めする
- 契約期間は忘れた(記憶では3年間)が、契約金は50万円
- 上記のトラブルに責任を持って対応する
- 校長からも「勧めてほしい」と内密で言われている(絶対ウソ。最後の電話でダメ押しに言っていた)
- 毎年、相当数の新任教員が申し込んでいる
- 今年度の枠ももうすぐ埋まる。明後日までに契約の意思を固めて欲しい
大まかに書くと以上の内容でした。
合計3回くらい電話で話しました。
それにしても、裏で校長から頼まれているなんて大ウソをよくついたものです。
電話だから言えることでしょうね。
対面だったらそんな大ウソ、まともな神経なら言えたもんじゃないでしょう。
詐欺全盛時代の前ですから、今考えると内容的には未熟だったと言わざるを得ません。
3.契約後の支援内容
- 専属の弁護士が最後まで親身に対応する
- 教育関係を専攻する大学教授が支援する
- 教育問題は特殊なため、経験豊富な陣営でないと厳しい
といった感じのことを力説していました。
「弁護士」「大学教授」、、、はい、やっぱりご登場!ですね。
権威(社会的勢力)を振りかざして、説得力アップを図る常套手段です。
「早く決めないと枠が埋まります」
2度目の電話では、「早く決めないと枠が埋まる」と厳しめの口調になっていました。
これも今でも詐欺の常套手段ですね。
それにしても、どこから名簿を手に入れたのか…。
思えば当時は簡単にそれが手に入る時代でした。
昭和50年代の『相撲』という雑誌をめくると、数か月に一度、各力士の実家の住所が記載されています。
今なら大問題になるでしょうが、平和な時代でしたね。
さて、話を戻します。
私は、女性に本社の場所を尋ねました。
仙台市でした。私は心の中でつぶやきました。
「仙台なら住んでいたからわかる。質問してみよう」
まず住所を聞きました。
女性はスラスラ答えました。
もう忘れましたが、青葉区中心街の某ビルの〇階でした。
「私は仙台の大学で学んでいました。今でも仙台にはよく行きます。契約した後に会社に挨拶に行きたいです」
もちろん、相手の反応を試すためのハッタリでした。
しかし、女性はあっさりと「どうぞいらっしゃってください」
私「大学教授は東北大学の先生ですか?」
女性「そうです」
私「名前を教えてください。私の出身大学なので知っているかもしれません」
女性「名前については契約後にお伝えすることになっております」
う~ん、なかなか尻尾をつかませない…。
今の私なら、「専属の大学教授の名前も聞かないで契約するはずないでしょ!」と迫ったでしょうに。やはり若かったのですね。それ以上の追求はやめました。
3度目の電話は向こうから掛かってきました。
「もう定員が埋まります。2時間だけ待ちます。意志が決まったら電話をください」
結局、それが最後の電話になりました。
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【詐欺】鍼灸師から聞いた話
ここから先は私の体験ではありません。
いつもお世話になっている鍼灸師から聞いた話です。
患者さんから聞いた話を教えてくれました。
間接的に聞いた話ですので、そのことを前提にお読みください。
【詐欺話その1】警察署からの電話
詐欺師「〇〇警察署の△△です。
これから詐欺の常習犯を逮捕しますので、ご協力をお願いします。
おそらく、2時間以内にお宅に犯人が行くと思われます。
警察を装って『通帳を確かめたいから預けて欲しい』と言うはずです。
言われたら、断らずに渡してください。
近くに張り込んでいる警官が尾行して必ず逮捕します。
逮捕後は、責任を持って本物の警官が通帳を返しに伺いますのでご安心ください。
ぜひ、ご協力をお願いします。」
被害者「どうしてわざわざ預けないといけないのですか?」
詐欺師「物的証拠があると確実に逮捕できるからです。よろしくお願いします」
この手口、けっこう引っかかる人も少なくないらしいです。
詐欺の手口はますます巧妙化しているようです。
人の善意につけ込む許しがたい行為ですね。
でも、通帳だけでお金を下ろせるのでしょうかね?
その辺りの事情は、聞きかじりなので私にはわかりません。
もしかしたら、カードも渡して暗証番号まで聞くのでしょうか?
「警察」と聞くとつい信じてしまう心理につけ込む悪質さを感じますね。
鍼灸師ご本人の経験でもないので、この話についてはこの程度にしておきます。
【詐欺話その2】低周波治療器でボロ儲け
以前勤務していた常連の患者さんで、
「俺は昔詐欺で大儲けした」
と自慢する人がいたそうです。
今はもうやっていないそうです。
今もやっていたなら、当然そんな自慢はしないでしょう。
外国から低周波治療器を安価で買い集めて、それを持って農家に訪問販売したらしいです。
「使ってみてください」
と自宅で体験させながら売り歩き、
「医学博士〇〇先生も推奨」を書かれた簡単なパンフレットを作って、一台20万円くらいで売っていたということです。
北海道での話です。
日本の治療器は、サイズのコンパクトさが売りです。
しかし、外国で生産した安いものはサイズが大きかった。
それが功を奏したらしいです。
- サイズが大きい=パワーがある
- 機器が重い=性能がギッシリ詰まっている
実際には、
- サイズが大きい=技術が未熟
- 機器が重い=持ち運びに不便
が真実なのですが、それをうまく逆手に取ったのですね。
考えることが奇抜と言いますか、一般の人とは逆の発想なのでつい騙されてしまうのでしょうね。
もう一度書きますが、相当数売り歩いたと自慢していたそうです。
来客をリビングに入れた段階で相手は心を許しています。
そんな折、治療器を使わせてもらって、
「どうですか?効き目あるでしょう?」
と語りかけられたら、
「いえ、効きませんね」
とはなりにくいですね。
「ホントだ。気持ちいいね」
と言いたくなるのが、自然な心の流れではないでしょうか。
という私もこれまで温泉旅館で出張販売している健康器具を3台購入した経験があります。
「いいでしょう?効き目ありますでしょう?」と目の前で言われると、本当に効き目があるような気持ちになります。
購入後、自宅で使ってみると、たいしたことはなかったです。
ちゃんとした業者のものでしたが、それでも苦い経験です。
「ただで使わせてもらって申し訳ない」という気持ちにも襲われます。
それこそ、善意に付け込んだ悪質な手口ですね。
【権威(社会的勢力)の原理】人は権威・肩書きに弱い
社会的地位とステータスシンボル
社会的権威から受ける影響を心理学では「権威(社会的勢力)の原理」と呼びます。
この「社会的勢力」=「権威を持っていると思われる人」とは、
- 実際に高い社会的地位についている人物
- 地位を象徴するステータスシンボルを持っている人物
のことを指します。
前述の詐欺が成功するのは「警察官」という権威があるからです。
警察官、大学教授、弁護士、医者、大会社の社長などは1に該当します。
「消防署のほうから来ました」と昔からあったやり口も「消防署」という権威を利用したものです。
2としては、
- 高級車に乗っている
- 高価なブランド品を身につけている
など、少しでも権威を感じさせるものがあれば、人はその人物を信じやすくなります。
この心理を利用して権威を持たせることを権威づけといいます。
「権威づけ」は社会の中で多く行われており、その権威に従ってしまう人も多くいるということを知っておいた方が安全です。
【社会的勢力】5つの影響力
心理学者のフレンチとレイブンは、「社会的勢力」についての研究で、次の5つの影響力を挙げています。
- 賞勢力(しょうせいりょく):この人物に従うと「いいことがある」と思わせる影響力
- 罰勢力(ばつせいりょく):この人物に従わないと「罰や損失をこうむる」と思わせる影響力
- 正当勢力(せいとうせいりょく):社会的な立場上、従うべきであると思わせる影響力
- 専門勢力(せんもんせいりょく):専門家という立場に従わせようと思わせる影響力
- 参照勢力(さんしょうせいりょく):魅力ある人物に憧れ、真似をしたいと思わせる影響力
その後、他の研究者たちから次の2つの社会的勢力も提唱されています。
- 情報勢力(じょうほうせいりょく):メッセージに説得力があるから、従いたいと思わせる影響力
- 魅力勢力(みりょくせいりょく):魅力ある人物や好意を持った人から頼まれたら従ってもいいと思わせる影響力
意図的に影響を受け、操られていることがあることを理解しておくべきです。
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「権威(社会的勢力)の原理」の活用例
- 「〇〇大学医学部の●●教授が推奨している」⇒大学教授の名前を使うと一般人は信用しやすくなります
- 厳しい上司から「◇◇をやりなさい」⇒「出世に影響する」「嫌われたくない」と感じる
- 「私は◆◆の専門家です」⇒自己の知識・技術への権威付け
「研究」「~家」「~官」「~師」「~士」に弱い日本人
「研究」という言葉に対して一目置く傾向がありますね。
「小説家」「作曲家」「作詞家」などと聞くと、何か特別な人という感情を持ってしまうかもしれません。
「面接官」に対しては誰しも緊張して接するでしょう。
「検察官」「刑務官」など権威を持たせる職種が多いことも確かですね。
ところが、
「私は〇〇の研究家です!」
これはちょっと微妙です。
「鉄道模型研究家」「昆虫研究家」「登山研究家」「スマホゲーム研究家」など「研究家」はどんな言葉に付けても違和感がありません。
「俺は、六大学野球研究家だ」
と言っても、
「趣味を極めている人なのだな」で済みます。
ところが、「六大学野球研究者」と言われたら、ニュアンスが変わります。
また、「昆虫研究者」となると、昆虫関係の論文を書いている学者を連想します。
「スマホ研究者」といわれると、
「工学部がそんな研究をする時代になったのか!?」
と思わせるかもしれません。
ところが「スマホ研究家」と言えば、
「マニアックな人なんだな」
で済んでしまうでしょう。
せいぜい、「ちょっとオタクっぽい人?」と心理的に引かれる程度でしょう。
だから、「私は〇〇の研究家です!」というのは、趣味を究めている人やそれを自営にして活躍している人、というニュアンスになりそうです。
境界線が曖昧であることは重ねて書いておきますが、「研究」という言葉にも「権威」を狙って使うケースがあるので注意は必要かもしれません。
【あとがき】詐欺師は思わぬところに!
改めて言うまでもなく、詐欺は人として最低の行為です。
詐欺は論外としても、購買欲を刺激する目的にも権威が利用されていることは知っておいて損はないと思います。
過剰に疑うのも問題ですが、とにもかくにも宣伝の多い世の中です。
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