
人は、不安な時ほど「守ってくれる人」を求めます。
それは弱いからではありません。
社会に出たばかりの頃。
失敗したくない時期。
孤独の中で踏ん張っている時期。
そんな時、人は「大丈夫です」「任せてください」という言葉に、少し救われたくなるものです。
今回は、私が若い頃に実際に経験した奇妙な電話の話を書きます。
そして、その後になって気づいた「人はなぜ肩書きや権威に安心してしまうのか」という話にも触れてみたいと思います。
- 若い頃に掛かってきた一本の電話
- 「新採用の先生を守ります」
- 人は「肩書き」に安心してしまう
- 「早く決めてください」
- 人は「安心したい」と思って生きている
- 「騙される人が悪い」では済まない
- まとめ|人は不安な時ほど「権威」に安心したくなる
若い頃に掛かってきた一本の電話
30年以上前の話です。
私は、オホーツク沿岸の高校へ赴任したばかりでした。
まだ右も左も分からず、毎日緊張していた頃です。
そんなある日、学校へ一本の電話が掛かってきました。
相手は女性でした。
「周囲に先生方がいる場所では話しにくい内容なので、公衆電話から折り返していただけますか?」
そう言われ、私は職員玄関近くの公衆電話から電話を掛け直しました。
今思えば、それも相手の作戦だったのでしょう。
周囲から切り離し、一対一の空気を作る。
人は孤立すると、少し判断が揺らぎやすくなります。
「新採用の先生を守ります」
女性は、落ち着いた声でこう話し始めました。
「新採用の先生は、さまざまなトラブルに巻き込まれやすいんです」
- 保護者とのトラブル
- 生徒との問題
- 失言による責任問題
- 交通事故
- 学校内の人間関係
まだ若かった私は、その話を聞きながら内心かなり不安になっていました。
実際、新任時代は毎日必死です。
失敗したくない。
迷惑をかけたくない。
教師としてちゃんとやれるのだろうか。
そんな不安を抱えていた時期でした。
だからこそ、相手の言葉は心に入り込みやすかったのでしょう。
女性は続けました。
「そうしたトラブルから先生を守るために、当社では特別な支援制度を用意しています」
契約金は50万円ほどだったと思います。
今振り返ればかなり高額ですが、当時の私は、完全には笑い飛ばせませんでした。
それくらい、若い頃の不安は大きかったのです。
人は「肩書き」に安心してしまう
相手は、さらにこう続けました。
- 専属の弁護士が対応する
- 大学教授が支援する
- 教育問題に強い専門家がバックアップする
今なら分かります。
これは、「権威」を利用した話法だったのです。
弁護士。
大学教授。
専門家。
そうした肩書きを聞くと、人は少し安心してしまいます。
もちろん、本当に信頼できる専門家もいます。
ですが、人は不安な時ほど、「詳しい人」「偉い人」「守ってくれそうな人」の存在に心を寄せやすくなるのです。
特に若い頃は、その傾向が強いのかもしれません。
「早く決めてください」
2回目の電話では、相手の口調が少し強くなっていました。
「もうすぐ定員が埋まります」
「早めに決断してください」
今思えば、それも人を焦らせるための言葉だったのでしょう。
人は、急かされると冷静さを失いやすくなります。
特に、不安を抱えている時ほど。
「今決めないと危ないかもしれない」
そんな気持ちに追い込まれてしまうのです。
私は途中で違和感を覚え始めました。
そこで、相手に会社の所在地を尋ねました。
仙台市の中心部にあるビルだと言います。
私は仙台の大学に通っていたことがあったため、少し探りを入れてみました。
「東北大学の教授というのは、どなたですか?母校なのでわかるかもしれません」
すると相手は、
「名前は契約後にお伝えする決まりです」
と答えました。
今ならもっと追及したと思います。
でも、当時の私はまだ若く、そこまで強く言えませんでした。
人は、相手に押されると簡単には反論できないものです。
特に「ちゃんとした人」に見える相手には。
人は「安心したい」と思って生きている
結局、その電話は最後には自然に終わりました。
私は契約しませんでしたが、今振り返ると、不思議な気持ちになります。
なぜなら、私は完全に相手を信用していたわけではないからです。
それでも、どこかで「守ってもらえたら安心かもしれない」という気持ちがあった。
人は、不安が強い時ほど、安心できるものを探します。
肩書き。
専門家。
組織。
権威。
そうしたものに心が寄っていくのは、ある意味とても自然なことなのかもしれません。
だからこそ、人の不安につけ込むような行為は、本当に悲しいことだと思います。
「騙される人が悪い」では済まない
詐欺のニュースを見ると、
「どうして騙されるのだろう」
と思うことがあります。
ですが、人はいつでも冷静でいられるわけではありません。
孤独な時。
疲れている時。
焦っている時。
余裕を失っている時。
そういう時、人は「大丈夫です」「任せてください」という言葉に、少し救われたくなるのです。
それは決して特別弱い人だけの話ではありません。
誰の心にもあるものだと思います。
まとめ|人は不安な時ほど「権威」に安心したくなる
人は、「安心できる場所」を求めながら生きています。
だからこそ、肩書きや権威を見た時、つい信じたくなることがあります。
警察。
弁護士。
大学教授。
専門家。
そうした存在そのものが悪いわけではありません。
ただ、人は不安な時ほど、「ちゃんとしていそうなもの」に心を預けたくなる。
そのことは、少し覚えておいた方がいいのかもしれません。
特に、
「急がせてくる」
「不安を煽る」
「今すぐ決めてくださいと言う」
そんな相手には、一度立ち止まることも大切なのだと思います。
▶ 人は、不安な時ほど「安心できそうな人」を信じたくなる
肩書きや専門家という言葉に、人はつい安心感を抱いてしまうことがあります。
「みんながやっている」「専門家が勧めている」が人の判断に与える影響について書いた記事です。
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