YouTubeの「貴闘力チャンネル」で尾車親方に批判が集まっているようです。
私は中学生の頃から、琴風関の大ファンでした。
いっぽうで、貴闘力さんの大相撲改革メッセージは大変興味深く、人生を賭して「相撲界を何とかしなきゃ」と立ち向かっている姿に感銘を受けてもいます。
雨が降れば傘をさせばいい
大阪市旭区高殿五丁目五一 浪速クローム工業KK内
中山美和子様前略
先日、お母さんに電話でいったように、相撲取りになって八年になりますが、初めて手紙を書きます。今度、入門以来怪我をして、初めて入院して、いろいろ一人になって考えることがありました。まず入院して二日目のことです。いつも僕の相談相手になってもらっている方から電話がありました。
「今度の怪我は非常に残念だと思いますが、君はまだ若いのだからそんなとで気にする必要はない。でも、この機会だからいうのだが、君が今年三役に上がってから、特にこの半年の相撲は毎場所、横綱、大関を破る力のついていることはわかりますが、どうも守りの相撲のような気がする。幕内上位を守ろうとする気が強すぎるのではないだろうか。天下を取るには、いろいろの事が待ちうけています。今から守る必要はありません。もっと思い切ってやりなさい」という話を僕にいって下さいました。そして、最後にもう一言、「雨が降れば傘をさせばいい」といわれました。
この話を聞いて、僕はぎくっとしました。確かにそうではなかったかと思いました。毎日ベッドで一人になって、悪い頭でとことん考えてみました。が、やはり少し相撲というものを甘く考えていたような気がします。
もちろん、今まででも、けっして稽古をさぼってきたわけではありません。一生懸命にやってきたつもりです。でも、何かがたりなかったのでしょう。大関候補、大関候補と世間からさわがれて、ある程度の地位もたもってきたので、自分の気持ちの中で慢心していたと気がつきました。きっとお父さんやお母さんもそうではなかったかと思います。
そして、今年は一家にとって家を新築するという大きな出来事がありました。僕も初めて自分の一家の家を建てるということで、とてもうれしく思いました。その、ほっとした気持ちも災いしたのではないかと思います。
自分でも思うのですが、このままではどうもこれ以上出世できないのではないかと不安でなりません。そこで、僕の決意なのですが、来年は相撲という僕が一生を、自分の人生をかけた職業に対して、一から考え直して、きびしくやりたいと思います。命をかけてでも勝負してみたいと思います。そうじゃないといけないと思います。
僕も来年は二十二歳になります。もう子供の親になってもおかしくない年だと思います。
そこで、もうそろそろ親から乳離れをしなきゃいけないのではないかと思いました。乳離れをして、一人になって一からやり直したいと思います
僕は一人で東京暮らしですが、本当に一人になってみようと思います。そして、家族を思い出した時は、電話もできるし、千昌夫の「北国の春」でも歌ってみんなのことを思い出します。一度聞いてみて下さい。いろいろ自分の勝手なことばかりいって申しわけありません。これでも、書とうか、書かないで自分一人だけにしまっておこうかと入院中ずっと考えました。でも、僕たちは家族なのだから、きっとわかってもらえるような気がしました。電話で話そうとも思いましたが、声を聞くといつものありふれた会話しかできないようになってしまうのです。
昔から、やっぱり気は弱いようです。でも、若いうちは当たって砕けろだと思いましたので、ペンをとりました。どうもすみません。
僕も今年は新三役になって、ある程度たくわえもできたところから始まりましたが、来年は幕内の一番下位におち、また借金もたくさんできました。でも、十両時代のことを考えて力いっぱい戦いぬくつもりです。新しい家は、一家の大黒柱であるお父さんがしっかり守って下さい。お母さんもあまり無理をして体をこわさないようにして下さい。
いろいろわからなくなったので、このあたりでペンを置きます。きっとこれが僕の最初で最終の手紙だと思います。では、さようなら、また電話下さい。
昭和五十三年十二月一日
東京都墨田区大平四丁目十八ー十三 佐渡ヶ嶽部屋内 中山浩一
『青春の意地 土俵にかける執念』(琴風豪規)潮出版社(昭和55年発行)
【四柱推命】元大関琴風さん
月支比劫星「印綬格」日干「戊」
月上「偏官」から、義理人情に厚い印象を与えます。弟子から慕われる親方でしょう。
心の奥は、意志強固で独立自尊の念が強く、直情径行型の負けず嫌いで行動力があります。
頭が良い人ですが、ヘタな駆け引きは用いず、スパッと割り切った考えかたをする、ネチネチしない人です。
人一倍の努力家です。けっして悪人ではありません。
貴闘力さんが何度も強調するように、角界のシステム(しきたり)の中では、自己の本質的性格のままでは生き抜きがたい部分があるのかもしれません。
また、ときには権謀術数が必要な場面もあることでしょう。
実際の性質としては、竹をスパッと割ったような、潔さがある人です。
大関から平幕に陥落し復活をかけた場所の3日目で、「親方(元横綱 琴櫻)にこれ以上迷惑はかけられない」とスパッと現役を引退しました。実に大関らしい潔さを感じました。
ただ、日支にある「比肩」が強いため、自意識やプライドが高くなり、それが侵害されると自己中心的になって、周囲の人への気配りや思いやりを忘れてしまうことがあります。
そして一番気になるのは、月支「辰」と日支「辰」は三刑になり、命式が破格していることです。
尾車親方の人生を振り返ると、歳運の刑冲が事象にハッキリとあらわれています。
刑冲にあたる年に怪我、病気が…
例えば、昭和52年ですが、
第3運 18~27歳 大運【壬 寅】 偏財運 東方木運
歳運【丁 巳】印綬運となっていて、その歳運は、昭和53年2月3日まで続きますが、1月場所に膝の大怪我をしています。
この1年ですが、
歳運の地支「巳」と大運の地支「寅」が刑になり、
- 他人の影響によって、損失を被ったり被害を受けやすい年
- 健康不安、精神不安、環境の変化変動が起きやすい年
と、その通りになってしまいました。
また、次の昭和54年2月3日まで続く1年も、
歳運【戊 午】比肩運 羊刃で、歳運の比劫星「戊」が月支の比劫星「戊」と重なり、大運の財星を剋すため、
- 不測の災厄や、健康上の問題、家庭上の事件などが発生しやすい年
と見ますが、その通りに2度目の膝の大怪我に見舞われました。
さらに、2012年に頚髄を捻挫して緊急入院し、手術。首から下が麻痺して寝たきりの状態に陥った時の歳運も、【壬 辰】偏財運で、
- 歳運地支「辰」と日支「辰」が刑で健康不安要注意
にあたる年でした。
このようにざっと振り返っても、歳運の刑冲の害をもろに受けやすい人だと言えるでしょう。
その原因ですが、命式に、日支「辰」と月支「辰」の刑があり、元来盤石の運命の持ち主ではないためです。
良い時と悪い時の振幅の差が大きい運命の持ち主のようです。
精神面は、本来持っている克己心で乗り越えてきたのでしょうが、健康面については常に不安がつきまとい、恐らく風邪などを引きやすい体質かと推察します。
今の大運は、66歳まで【戊 戌】比肩運ですから、自我が強くなり、出すぎる行動が多くなって凶に働きやすい時期です。
つまり、強気になって対人関係にトラブルを生じやすい10年間となりますので、注意が必要です。
それだけでなく、空亡の期間中で、日支と月支と七冲になるため、非常に要注意の10年間です。
強気がさらに凶を招く運気となりますので、貴闘力さんから批判を受けることになったのだと考えるとつじつまが合ってきます。
今後のことを見てみますと、
来年2021年、
- 歳運「丑」と大運「戌」が刑になるので、かなり注意が必要。
2024年も、
- また歳運地支と日支の刑にめぐるため、要注意となります。
あとがき【四柱推命】元大関琴風さん
20歳を過ぎたばかりの琴風さんは、飛ぶ鳥落とす勢いの若き大関候補でした。
それが好事魔多しといいますか、
昭和53年1月場所の麒麟児戦で左膝内側側副靱帯断裂。翌1月場所の金城(後の栃光)戦でそれを再発させて再び途中休場。
古傷の再発ということで公傷が適用されず、以後2場所連続全休で幕下30枚目まで陥落。
それでも腐らずケガを治すと幕下2場所、十両1場所で通過し、昭和55年1月場所で幕内復帰。その場所で12勝3敗の成績を挙げ敢闘賞を受賞。
翌3月場所も10勝5敗の成績を挙げ2場所連続の敢闘賞受賞。
5月場所では関脇に復帰し10勝5敗の成績を挙げ殊勲賞を受賞するなど再び大関候補にのし上がるも7月場所ではまたも栃光戦で左膝内側側副靱帯断裂・左膝半月板損傷・左腰部挫傷の大ケガで途中休場。
当時理事長の春日野親方(元横綱栃錦)が「今度こそ駄目だろう」と言ったほどの重症であった。この怪我で初めて患部にメスを入れたということからも怪我の重大さが分かる。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』参照
不屈の闘志で幕下から大関まで上り詰めた根性の人でした。
私は、北の湖さんと並んで琴風さんを応援し、対戦する日にはどちらを応援しようか悩む中学生でした。
「雨が降れば傘をさせばいい」は私の心にも深く刺さり、困難に当たった時には思い出しては自分を鼓舞していたことを思い出します。
そんな琴風さんですが、「貴闘力チャンネル」で批判の的になっています。
事の是非は部外者の私にはわかりませんが、人生の軍配には、0対100も100対0もなく、そこには様々な事情や思惑が交錯しているものと思います。
そこにプライドなどの感情が絡めば、状況はさらに複雑化するのは世の必定ですが、相撲界の発展のために、何とか良い方向に進んでいただけたらと、いちファンとして願います。
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