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【不登校・男子高校生】ピンチからの脱出「信じている」父の言葉

思春期といわれる中高生時代は、心が安定しません。

誰かの支えが必要です。信頼できる友達は大きな支えになります。

ですが、本当にピンチの時に頼るところはやはり「親」です。

この記事は、親子の信頼関係が不登校を克服した実話です。

 

【高校生男子】「頭が痛い」と学校を休みがちに

1つのケースをご紹介します。高校1年生の男子の実例です。

お父さんは遠くに単身赴任していました。

ふだんはお母さんと本人、そして弟と3人で暮らしていました。

 

入学後、最速の「校則違反」ピアス

その男子は、勉強も好きでなく、課題の提出も遅れがちの生徒でした。

4月の入学時から「目立ちたい」雰囲気満載でスキあれば教師にバレないようにピアスをしている日もありました。

「俺は、規則を破る度胸があるもんね」

といったよくある自己顕示です。

「いつか何かをやらかしそう…」

そんな会話を担任団は時々していたものです。

「頭が痛い」突然の欠席

その子が、ある日を境に急に登校しなくなりました。

お母さんが理由を聞くと「頭が痛い」と答えたのが最初の理由だったそうです。

仕方がないので休ませると、翌朝も「頭が痛い」と言います。

そして、その翌日も。


お母さんが、登校を促しても頑として動きません。

かたくなに「頭が痛い」と言うのです。

困り果てたお母さんは、病院の受診を勧めました。

しかし、病院に行くことも拒否しました。

「この子は学校に行きたくないに違いない」

と確信したお母さんは、理由を本人から問いただそうとします。

しかし、「他に理由はない。ただ頭が痛いから。」としか言いません。

困ったお母さんは、パートに向かう途中、つまり本人がいない場所から学校に電話を掛けてきました。

「頭痛が原因ではない…」親と担任の会話

初めて詳しい経緯を担任に話して相談したわけです。

担任も「何日も頭痛とは、もしかしたら他の理由があるのかも」と気にしていました。

しかし、授業中に勉強がツラそう、めんどくさそうに見える以外は理由が思い当たりません。

結局、お母さんも担任も理由がわからない状態で、「何かわかったらお互いに電話で情報を交換しましょう」ということで、その日の電話は終わりました。

こういう電話の場合は、本人に知られないことが大切です。

高校生にはプライドがありますから。

「親と担任が自分のことを話している…」は、知られると逆効果になることが多いからです。

 

担任に「頭が痛かった」「もう大丈夫」

その翌日、何事もなかったように彼は登校しました。

お母さんが胸をなで下ろしたのは言うまでもありません。

登校した彼を見てホッとした担任は、昼休みに個室に呼んで事情を聞きました。

「頭が痛かったから休んでました。もう大丈夫です」

と笑顔で語りましたが、本心ではないことを担任は直感しました。

担任は、彼が家に着く前の時間を見計らってお母さんに電話をして、次のことを伝えました。

「S君と話をしましたが、『頭が痛かったから』という理由に終始していました。でも、おそらく本心ではないと思います。明日からまた心配です。何か話してくれたらまたコッソリご連絡ください。私も思い当たる節を探ってみます。」

 

翌日から長期欠席が始まる

担任の不安は的中し、また翌日から彼の休みが始まりました。

「今朝も『頭が痛い』と部屋から出てこないんです。申し訳ありませんが欠席ということで…」

という電話が毎朝学校にかかってきました。

お母さんも大変だったことでしょう。


欠席は3週間以上続き、その間登校したのは2日だけでした。

1~2日頑張って登校して「やっぱりダメ」と確信して本格的に登校しなくなる。

不登校の初期段階でよくあるパターンです。

こういうケースでの欠席の原因は友人関係にあると考えてほぼ間違いありません。

この担任、何を隠そう「私」でした。

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単身赴任中のお父さんの登場

お父さんにも「頭が痛いから」

心配したお父さんが、土日に遠方から帰宅しました。

約1ヶ月ぶりの再会です。

世間話にはにこやかに付き合ったそうです。

しかし、

「ところで、学校に行っていないんだって?」

と本題に入ろうとすると急に無口になったそうです。

何度聞いても、

「頭が痛いから」

しか言いません。雰囲気もすっかり重くなりました。

ふだんの父子関係は悪くなかったそうです。

しつこく問いただすのは得策でないと判断したお父さんは、日曜の夜に赴任地に帰るしかありませんでした。

翌週も1日しか登校せず、心配したお父さんがまた週末に帰宅しました。

そして、「夜のドライブ」に我が子を誘い出したのです。

 

父子2人で夜の長距離ドライブ

「旭川までラーメン食いに行こうか。旨い店があるみたいだ。父さんも食べたことないから、付き合ってくれないか?」

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夜は不思議な空間を演出します。

夜の片道150キロメートルの遠距離ドライブは高校生には新鮮です。

暗闇とネオンの光の対比が、幻想的な雰囲気を作り出し、現実から心を解放してくれる効果があります。

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その上、車の中は完全な密室です。

会話の内容が外に漏れる心配はありません。

さらに、視線は前方を向くのでお互いに目を合わせずにすみます。

「壁に耳あり障子に目あり」といいますが、車だと壁の外は道路です。

車の中は心の思いを打ち明けやすいのです。

さて、“いい感じ“になったらチャンス到来です。

タイミングは大事です。

リラックスし過ぎて眠ってしまったら作戦は失敗に終わります。

好きな音楽を鳴らすなど、寝かさない工夫は必要です。

「学校に行きたくないのは…」

結論ですが、質問を重ねなくても学校でのことをポツリポツリと語ってくれたそうです。

お父さんも上手に聞き出したものです。ふだんから信頼関係ができていたのでしょう。


登校したくない理由は、複数の友人から

「お前はウソが多くて信用できない」

と言われたことでした。


内容をつなぎ合わせると、それが理由だとお父さんは理解しました。

ウソの内容は「中学生時代のケンカの武勇伝」でした。

単身遠くの中学校から入学したので、誰も過去の自分を知らないと安心していたのでしょう。

中学時代の武勇伝(作り話)をたくさん語っていたのです。

最初は信じていた級友も、だんだん怪しがるようになり、入学後2か月も経つと聞く耳を持つ人はいなくなりました。

他校生からの情報で、真実は意外と簡単にわかってしまうものです。

私も後日、「彼はウソばかりついている」と他の生徒から聞かされました。

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【不登校・男子高校生】あとがき

子どもが心を開いてくれるキッカケは様々ですが、夜の2人だけのドライブがうまくいった例はけっこう聞きますし、私も若い頃は何度も使った「手」です。

実はこのお父さんも、私がお母さんに話した経験をそのまま実行してくれたのでした。

でも、今の時代はダメなんですよね。

事故を起こしたら責任問題になるとして、生徒を同乗させることはキツく禁じられています。

当時も禁止ではありました。

しかし、今の時代ほど神経質にならず、私は部活動の遠征でも年に数回、自分の車に生徒を乗せていました。

今思えば、事故に遭わなくてよかったです。


子どもは「苦しい胸の内を誰かに聞いてもらいたい」という願望を持っています。

大人もそうですけど。

信頼して聞いてもらえる人の存在が必要なのですね。

この後、お父さんは自分の経験も交えていろいろな話をしてあげたそうです。

「父さんも高校時代にハブかれたことがあった」

「誰でも一度や二度は調子に乗って間違うことがある」

「ハブく奴らはしょせん本当の友だちではないのだ」

行く気が起きるまで行かなくてもいい

「母さんには、それまで休ませてやれと父さんから話しておく」

 

などを話したそうです。

「父さんも同じ経験をした」

「お前を信じる!」

が話のキモ(要点)ですね。

「行かなくても良い」は「お前を信じている」重大なメッセージです。

お父さんにとっても一つの賭けでしたね。

 

翌週、火曜日に彼は登校しました。

その後は休みませんでした。

そして、少しずつ自信を回復し、

「一人ぼっちが永遠に続くわけではない」

「一人ぼっちは自分が思うほど恥ずかしいことではない」

と理解したのかな…?

親子関係が安定していると、このように初期の段階で不登校が解決できることは少なくないです。


その後の彼ですが、欠席することはなくなりました。

そして卒業後、大学に進学して行きました。

お父さん、「あっぱれ!」ですね。

会話の内容まで電話でわかりやすくお話ししてくれました。

こういう親、今は少ないです。

ちなみに「学校に行かなくて良い」は親にしか言えないセリフです。

教師がそれを言うと「学校に来なくてよい」になります。

一歩間違うと大問題になります…。

やっぱりイザという時、親の力は偉大です。

 

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